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新緑の森のダンジョン 春の嵐 1-1

お待たせしました、新連載!
そして発表します!
このシリーズのタイトルは、「新緑の森のダンジョン 春の嵐」です!
略して春シリーズ、それでは始まり始まりー。



ある春の日の出来事。

朝、シュウが目を覚ますと何かが違っていた。

部屋の中のはずなのに風が吹いているし、ベッドは硬いし、何より体が冷たい。

シーツをかけ直そうとして気付く。

いつもハルカを抱きしめてる腕が空っぽだということに。

そうか、だから寒かったのか……。

重い瞼を押し上げ、両手を見る。

黒い爪が生えていた。

……え?

さらに目を凝らすと、黒い爪は真っ白な腕に繋がっていた。

シーツで白いんじゃなくて――そもそもシーツは体にかかっていなかった――白い毛が沢山生えた腕。

いや、これは脚……?

肉球あるし……。

……肉球!?

ガバリと起き上がる。

でも、起き上がったはずなのに四本足。

そして、二本足で立てないことに関して、何故か違和感が無い。

……。

恐る恐る首をひねって後ろを見る。

そこには自分のものとは到底思えない胴体があった。

腕というか脚というか、ともかく、そこに生えていた毛と同じ白。

そして、爪と同じ黒い尻尾。

尻尾!?

大慌てで辺りを見回す。

周りは木、木、木――つまりは森の真っただ中。

その中の大木の下で今まで眠っていたらしい。

昨日の晩は確かに家のベッドでハルカと一緒に寝たのに……。

朝起きたら、白い体に黒い爪と尻尾、そして四本足。

”って、これはどこかで……。”

呟いたはずの言葉は人間の響きではなく、でも、いつも聞いているような――。

”アブソル、おはよーッス!”

”うわあああっ!やっぱりー!”

空から降ってきた言葉に、肉球付きの前脚でシュウは頭を抱えた。







”あれ?アブソル、頭押えたりなんかしてどうしたッスか?”

降りてきたのはフライゴン。

目の前に着地してこちらを不思議そうに見ている。

何故か自分がアブソルと呼びかけられていることが分かる。

人間のときの「アブソル」という言葉とは違うけれど、彼は明らかに自分に呼びかけている。

じゃあ、これはやっぱりアブソルなのか……。

”ほら、急がないと、シュウさんが起きちゃうッスよ?”

”は?”

どうしてここでぼくの名前が出てくるんだ?

フライゴンはワクワクとセカセカが混じったような、言うなれば悪戯を企む子どものような口調で続ける。

”シュウさんが起きちゃったら、絶対阻止されるッス!”

”……阻止?”

”そうッス!今日こそはハルカ嬢ちゃんをツアーに誘うッス!”

……ぼくが阻止したくなるツアーって何なんだ。

シュウはそこで気づく。

今、話しているフライゴンはぼくやハルカの名前を出している。

ということは、このフライゴンはぼくのよく知っているフライゴンだ。

見覚えがあるし。

ということは、フライゴンに話しかけられているぼくは……。

”あのアブソルか……。”

シュウはもう一度前脚を見下ろす。

鋭く長い漆黒の爪、太陽の光を反射して輝く純白の毛並み。

ハルカはこの柔らかな毛並みが大好きで、ぼくはいつもアブソルに懐いている彼女を迎えに行く。

間違いない、いつものアブソルだ。

”へっ?あのアブソルって何ッスか?”

フライゴンが不思議そうに尋ねてきた。

”アブソル、さっきからおかしいッスよ?”

顔を近づけて、無遠慮に視線を注いでくる。

”今日こそはハルカ嬢ちゃんをツアーに誘うって、昨日あれだけ張り切ってたじゃないッスか?なのにボケッとしてるし。”

”ボケッとしてるって……。”

シュウは戸惑う。

アブソルじゃないのだから当然だ。

その「ツアー」とやらが何なのかも知らないし。

”っ!?”

シュウは今更ながら重大な疑問に気づく。

ぼくの体がポケモンに変化したんじゃない。

アブソルの体にぼくの心が入っている状態なんだ。

なら、本来のこの体の持ち主、その中身はどこへ行った?

考えられるのは……。

”あっ!アブソル、いきなりどこ行くッスかーっ!?”

初めての四足歩行にも関わらず、シュウは疾風のごとく駆け出した。







自分の家の方角はすぐに分かった。

風が高い音を立てて耳の傍をすり抜け、景色は飛ぶように過ぎる。

程なくして、シュウは森の中に立つ一軒家を発見した。

そのままの勢いで、玄関のドアに突っ込む。

元々、鍵をかけていないドアは扉ごと吹き飛びそうな勢いで開いた。

寝室までわき目も振らずに突進する。

同じく寝室のドアを体当たりで破った。

そのベッドの上には――

「さあ、ハルカさん、目を閉じて。」

「う、うん……。」

”ぼくのハルカに何てことしてるんだーっ!”

どこからどう見ても、キスを迫っている自分の体に向けて、シュウは特大のかまいたちを放った。




続く

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