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新緑の森のダンジョン 春の嵐 2-2

お待たせしました!
春シリーズの続きです!
前回はポケモンサーチに報告はしたんですが、どうも順番が更新されていなくて、2-1を読んでいない方も多いみたいなんですよね。
そんな方は2-1からどうぞ。
今回はサーチ登録が順番に反映されますように!

えー、長くなりましたが、それではどうぞー。





”でも、何で入れ替わっちゃったんスかね?”

フライゴンが爪でマトマのヘタを取りながら言う。

”昨日までは普通だったし、そんなに変わったこともしてないッスよね?”

「ええ、私は。シュウさんはいかがですか?」

アブソルが器用に果物ナイフで皮をむきつつ、こちらに向かって問いかけてきた。

”ぼくにも心当たりが無い。ハルカ、昨日のぼくはいつもと何か違っていたかい?”

答えを聞く前に、ハルカの差し出していた木の実にパクリとかぶり付く。

「ううん、いつものシュウだった。」

答えてから、ハルカも手に残っていた木の実を口に入れた。

”そ、そうッスか……。”

フライゴンが何かを言いたそうにしながらマトマを頬張った。

「私達二人に原因が無いとすれば、外因的なものでしょうか。」

皮をむき終わったアブソルが果物ナイフを皿に戻す。

”誰かがあなた達を入れ替えちゃったってこと?”

「一言で言えば。ただ、相手が何者かは不明ですが。」

アブソルの言葉にシュウも頷いた。

”それはぼくも考えた。でも、そんなことが出来る相手がいるのか?”

シュウは考えながら続ける。

”誰かの心を入れ替えるというのは今の人間の科学力では無理だ。なら、それはポケモンの力である可能性が高い。”

”どんなポケモンッスか?”

”心を入れ替えると言っても、どんな入れ替わり方をしたのかでかなり違うと思うんだ。例えば……。”

シュウは少し頭を上げ、ハルカの唇に付いていた果汁を舐め取る。

”こんな風に、ぼくはこの体を自由に動かせる。”

”……例え悪すぎ。”

アメモースのツッコミはもちろん無視する。

”でも、あまりに自由度が高すぎて分からないこともある。ぼくは何故、君達と会話ができる?”

”ポケモンになっちゃったからでしょう?”

ロゼリアの言うことはもっともだけど。

”ぼくは昨日まで君達の言葉が分からなかった。それが今日いきなりポケモンになったからって話せるようになるものだろうか?”

”ハルカ嬢ちゃんは話せたらしいじゃないッスか。”

フライゴンが事もなげに言う。

確かに、ハルカは人の姿になった瞬間から人間の言葉を話せたらしい。

”でも、それはハルカが特別だから。”

驚異的な学習能力で、ポケモンの時代に人間の言葉をマスターしてしまっていた。

ただ、それが人間になるまでは使えなかっただけの話。

”ぼくは違う。君達の言葉はまるで分からなかった。意思疎通だって言葉じゃなく、身振りや視線に頼ってたんだからね。”

”つまり、どういうこと?”

ロゼリアの問いに先程から思っていた一つの答えを口にする。

”ぼくはアブソルと入れ替わっているけれど、それだけじゃなくて、アブソルの脳に蓄積されたデータを使って話している。”

ポケモン達はその言葉に目をパチクリさせた。

”んー、もうちょっと具体的に話してほしいなぁ。”

パチクリなのだろうが、サッパリ表情が分からないバタフリーが困ったように言う。

”それって感覚的なことじゃん?もうちょっと部外者にも分かりやすくさ。”

”そもそも、アブソルの体が動かせるのはアブソルの脳からの指令があってこそじゃないの?”

ロゼリアは眉をひそめながら尋ねてきた。

”相手はただのテレパスじゃないってことじゃないッスか?”

パチクリ状態だったフライゴンはいつの間にか二つ目のマトマを手にしている。

随分と辛いものが好きみたいだ。

”本来、誰かの心を入れ替えるっていうのはエスパータイプに属する技ッス。言うなれば、自分の脳波を無理やり他人の脳に中継させて他人に潜り込んでるような状態ッス。”

”うわー、フライゴンが博学に見える。”

”うるさいッスね、バタフリー。オイラ、戦闘に役立つ知識はこれでも結構持ってるんスよ。”

確かに、フライゴンは戦闘面での強化が著しい。

テレパシーに関する事項も戦闘知識の一環として持っているのだろう。

二つ目のマトマのヘタが取れなくて苦戦している姿からは全く想像がつかないが。

”脳波の中継ってことは、思考は自分の脳でしてるッスから、相手の記憶とかそんなものまでは踏み込めないはずッス。記憶っていうのは、この場合、アブソルの言語パターンッスね。”

”だったら、記憶に踏み込めてるこの状態は何なの?”

”だから、相手はただのエスパーじゃないって言ってるッス。”

やっとヘタの取れたマトマを口に放り込んだ。

”さっき、オイラは記憶に踏み込めないはずって言ったッスけど、実はテレパシーで相手の記憶を見ることはできるッス。ただ、見ようと思ったら、それ以外の力なんて使えないくらい大変なはずッス。しかも……。”

取ったヘタをぷちぷち千切りながら似合わないことを続ける。

”自分が他人に入ってるんじゃなくて、他人と他人を入れ替えてるッス。しかも、全然種族の違う人間とポケモンッスよ?”

マトマ、三つ目。

”ポケモンと人間が入れ替わったんスから、体動かすにしても普通は違和感だらけでまともに立てないはずッス。それなのに、ハルカ嬢ちゃんとラブラブできたり……くーっ!何で入れ替わったのがオイラじゃないッスか!?”

マトマを握りつぶしそうな勢いで悔しがっている。

「私の日頃の行いが良いからではありませんか?」

”だったら、オイラもこれからは心を入れ替えて、ハルカ嬢ちゃんにアタックするッス!”

”やめてくれ、頼むから……。”

シュウはげっそりしながら言う。

どうして、こんなに脱線するんだ……。

それとも、これがポケモン達の中では普通なのか?

「先ほどから申し上げているではありませんか。ハルカさんが可愛いから、皆こうなってしまうのですよ。」

嫌な結論だ。

”あー、とにかく、シュウさんもアブソルも互いの体に違和感持ってないどころか、自由自在に動かせてるッス。加えて、相手の知識を無意識に使って会話してるッス。脳波の中継と記憶の使用を同時に二人分なんて普通無理ッス。”

”つまり、そんなことが出来るのは余程のレベルのエスパーポケモンってこと?”

”……。”

ここでフライゴンが黙り込んだ。

いや、マトマをもぐもぐ食べているから話せないだけかもしれないが。

”……入れ替わったのがオイラだったら、その仮説も結構信憑性あるんスけどねぇ。”

ゴクンと飲み込んで、器に手を伸ばす。

マトマが無くなっているのに気づいて、隣のモモンを取った。

あ、ハルカがしょんぼりしてる。

ちょっと可愛いと思ってしまった。

「入れ替わったのが私であることがネックなのですか?」

ハルカの様子を見ていたらしいロゼリアが器に残っていたモモンを持ってハルカの元に駆けてくる。

パアッと笑顔になる様は本当に愛らしい。

”アブソル、エスパータイプのポケモンには滅法強いじゃないッスか。そんな技跳ね返しちゃうのが普通ッス。”

美味しそうに食べているのを見るのは至福の時だ。

”でも、実際に入れ替えられたッス。だから、相手は普通じゃない中でもとことん普通じゃないッス。”

顎に零れる果汁を堂々と舐められるあたり、アブソルの体も悪くない。

”……シュウさん、オイラの話聞いてるッスか?”

”もちろん聞いているよ。君の説とぼくの言いたかったことはほぼ同じだ。”

頷いてフライゴンの方を向く。

そう、相手として考えられるのは高レベルのエスパーポケモン。

普通のポケモンと違い、強化されているアブソルに技をかけられる相手などそういない。

いるとすれば、余程レベルの高いポケモン。

ただ……

”やっぱり、悪タイプのアブソル相手に、という点が……。”

”納得いかないんスよねぇ……。”

うーんと二人で唸る。

”別に、エスパー技全般に耐性があるわけじゃないよ、悪タイプって。”

バタフリーがいつの間にか用意されていた緑茶をすすっている。

”例えば、ぼくはエスパー技使えるけど、それって一つじゃないんだよね。”

緑茶の入っていたらしき急須がふよふよ浮かびながらキッチンに戻っていく。

”今のはサイコキネシス。”

次に緑茶の揺れる湯のみを見せる。

”これを沸かしたのはガスとか薪じゃなくてパイロキネシス。発火能力のことだけど。”

湯のみの緑茶が一瞬で沸騰した。

”あ、こんなことしたらお茶が不味くなっちゃう。”

バタフリーは急いで沸騰を止める。

”ここに座っててもキッチンのどこにお茶っ葉があるか分かったのは透視能力。というわけで、今回だけでも三種類のエスパー技使ってるんだよね。”

”……それって能力の無駄遣いじゃない?”

ロゼリアのあきれたようなツッコミが入った。

全くもってそう思う。

”使えるんだから使わなきゃもったいないじゃん。羽があるのに歩いてどっか行くようなもんだよ?”

隣の家に行くのに飛行機を使うようなものだと思うのだが。

”それで、アブソルに効かない能力って実は攻撃系統の技だけなんだよね。”

「そうだったんですか?」

アブソルが急いでソファーから身を起こす。

バタフリーはお茶を一口飲んで頷いた。

”サイコキネシスは効かないけど、透視はできるんだよね。探し物してるときとか、アブソルの後ろにあるものって見通せたし。”

「……それは驚きました。」

その言葉通りの表情で呟く。

”わー、シュウさんのビックリした顔って新鮮だぁ。”

”……あれはぼくじゃないって。”

そんなにケタケタ笑わないでほしい。

笑い声以外で表情は相変わらず分からないが。

”ただ、ぼくは今話してたようなエスパー技って使えないんだよね。テレパシーとか催眠能力とか心に関するやつ。”

空になった湯のみもふよふよキッチンに飛んで行った。

”透視能力と同じように、アブソルにもテレパシーが効くのか効かないのか、それとも高レベルってことで限定的に効くのかサッパリ分からない。”

「うーん、自分がどんな技を受けているのかすら分からない状況ですからねぇ……。」

アブソルが腕組みをしながら唸る。

「そもそも、自分と私を入れ替えるならともかく、シュウさんと私ですよ?使っている技も本当にテレパシーなのかどうか……。」

”そうじゃないかもしれない。ハートスワップの可能性あり。”

「アメモース?」

黙々と木の実を食べていたアメモースが顔を上げた。

”ハートスワップ。双方の心を入れ替える技。エスパータイプの技じゃない。アブソルにも多分効く。”

皆が目を点にしている。

”アメモースがこんなに長く話してるの初めて聞いたわ……。”

ハルカもコクコクと頷いている。

”でも、ハートスワップ使えるのってめちゃめちゃ限定されてるッスよ?”

”そう、蒼海の王子マナフィ。相当な使い手。聞いた話だけど。”

蒼海って……。

「あのー、ここ森なんですが……。」

しかも、相当深くて広い。

”水は全て海に繋がる。川もしかり。”

”じゃあ、何でそのマナフィがここに……?”

”さあ?”

「さあって……。」

アブソルと一緒にガックリうなだれる。

テレパシー以外でも心を入れ替える技があるのは分かったが、全く参考にならない。

”だいたい、マナフィってとっても数が少ないポケモンなんでしょ?たまたま、こっちに旅行に来てたなんて絶対無いんだから。”

”じゃあ、やっぱりエスパー説ッスかねぇ……。”

ポケモン達それぞれに意見を出してもらったが、それが一番納得がいく。

あ、そういえば……。

”ロゼリアはどう思う?何か思いついたことなんかあるかい?”

”私?そうねぇ……。”

ハルカにモモンを届けた後、ずっともたれかかってきているロゼリアにシュウは質問する。

こんなとき、いつも率先して発言するはずのロゼリアは何故か今回はツッコミ役に徹している。

”実は、仮説なんてどうでもいいのよねぇ。”

”は?”

どうでもいいとはなんだ、こんな一大事に。

”だって、仮説は仮説だし。原因が分かるわけじゃないんだもの。”

”……まあ、それはそうだけど。”

でも、そんな他人事みたいに言わなくてもいいじゃないか。

”拗ねないの。あなたもアブソルも。”

ソファーを見上げると、アブソルがムスッとした顔でロゼリアを見下ろしていた。

”別にあなた達を心配してないわけじゃないのよ。むしろ、心配しまくってるわ。”

”原因がどうだっていいのに?”

”解決できるなら真っ先に動くわよ。でも、今はどうにもできないし。”

”……それはそうだけど。”

心配しているようにはとても見えない。

”私はね、現実の問題の方がずっと深刻だと思うの。”

”現実の問題?”

アブソルの体だけど自由に動くし、会話だって出来るのに?

当面は心配ないと思っていたのだけど。

”あのね、アブソルは女の子なのよ?”

”そうだけど?”

ロゼリアの言葉にアブソルも首を傾げている。

そんな当たり前すぎることを言われても……。

”女の子なのよ、女の子!”

”だから知ってるって。”

女の子というよりは女性だと思うが。

少なくとも、精神年齢は大人だろう。

でも、それがどうしたというのだろうか。

”あなた、このままだと、この子と結婚できなくなるわよ!”

”え。”

”メス同士なのよ、メス同士!もうどうにもならないじゃない!”

えーと……。

”それまでには元に戻ってると思うんだけど……。”

”そんな保障がどこにあるのよ!”

「確かに、そうとは限りませんよね。一生このままの可能性も。」

不吉なことをアブソルがポツリと呟いた。

そうかと思えば、次の瞬間には至極楽しそうな笑みを浮かべている。

「だとすると、ハルカさんは私と結婚することになりますね。」

「え……。」

呆然としているハルカを取られる。

”待て!ハルカを返せ!”

アブソルはハルカを膝に置いてソファーに座り直していた。

割り込もうにも、密着しているハルカを巻き込むような攻撃は出来ない。

”あー、アブソル、いいなー。羨ましいなー。”

”ハルカ嬢ちゃんと結婚なんてずるいッス!体が入れ替わったくらいで!”

「ですが、そうするしかないんですよねぇ。」

どうすればいいのか分からないらしく、困った顔で腕に収まっているハルカ。

”アブソル、悪ふざけはよせ。”

ハルカの隣に飛び乗り、アブソルに凄む。

「悪ふざけではないんですねぇ、これが。」

言い終わると、アブソルは素早くハルカの頬にキスをした。

「え……っ。」

ハルカの顔が真っ赤に染まる。

”なっ……!”

「脈ありだと思いません?」

”ふざけるな!ぼくの体を悪用しておいて!”

「ふふっ、ハルカさん、仲良くしましょうね。」

”しなくていいからハルカを返せ!”

シュウの長い一日はまだ始まったばかりだった。




続く

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