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新緑の森のダンジョン 春の嵐 4-1

今日は暖かくて、本当に春になったような気分です。
そんなわけで、春シリーズ4-1スタート!






泣いてる、誰かが。

声を絞り出すようにして、名前を叫ぶようにして。

聞いているだけで、悲しくて死んでしまいそうだ。

ねえ、泣かないでよ。

お願いだから。

何でもしてあげるから。

「起きてよ、シュウ……っ!」

呼んでる、その子が。

分かったよ――ハルカ。







その瞬間、真っ暗だった世界に光が差し込んできた。

「ハルカ……?」

目の前で泣きじゃくっていた少女が顔を上げる。

「シュウっ!」

覆いかぶさるように抱きつかれた。

「ここは……?」

辺りを見回す。

見覚えのある部屋――自分の部屋だ。

シュウは自分のベッドに寝かされていた。

隣には目を閉じたアブソルが横たわっている。

「良かった、シュウ……。」

苦しいほどの力で抱きしめられる。

「大丈夫だよ、ハルカ。だから、泣かないで。」

よしよしと頭を撫でてやるが、泣き声は大きくなるばかり。

「ね、すぐにベッドも直してあげるから。」

「いい……!シュウがいてくれたら、もう何もいらないから……!」

胸に縋りついて泣きじゃくるハルカ。

シュウはその背をぽんぽんと叩いてやった。

”……。”

視線を感じたのでそちらを見る。

ハルカの座るベッドの逆の端、アブソル側にポケモン達が勢ぞろいしていた。

「もう大丈夫だよ。何も心配することはない。」

頷いてみせると、一様にほっとした表情を見せた。

その時、視界を覆う白がピクリと動いた。

”こ、ここは……?私は一体……?”

”アブソル、目が覚めたの!?”

”はい、まだ頭はぼんやりしていますが……。あれからどうなったんですか……?”

ええと……。

「……前言撤回。まだ大丈夫じゃないみたいだ……。」








「うっ……うぅぇ……ふえっ……。」

「ハルカ、泣かないでよ。本当に大丈夫だから。」

「だ、だって、シュウ……。」

こちらを見て新たな涙を溢れさせるハルカ。

「まだみんなの言葉分かるんでしょ……?」

ポケモンの言葉が分かる。

それだけなら喜ばしいことだ。

人類が太古の昔から夢見てきたポケモンとの会話。

それが今まさに実現しているのだから。

「シュウがまた倒れちゃうなんて嫌ぁ……。」

しかし、それはとんでもないリスクを孕んでいるのだった。

”シュウさん、女の子の慰め方がなってないッス!そういうときは「大丈夫、ぼくが君を置いて逝くわけないだろう。」くらい言わないと!例え嘘でも!”

「大丈夫って嘘なの……?シュウ、死んじゃうの……?」

「フライゴン、余計なフォローを入れないでくれ……。」

慰めるの大変なんだから。

あ、フライゴンがみんなにタコ殴りにされてる。

「ハルカ、大丈夫だから。まだ言葉は通じてるけど、それでも元の体に戻れたんだし。」

起き上がってハルカの細い体をぎゅっと抱きしめる。

「大丈夫。君を置いてどこかに行ったりしないから。」

”そ、それ、オイラの言ったことそのまんまじゃないッスか……。”

ロゼリアにバシバシはたかれながらフライゴンが息も絶え絶えに言う。

”タイミングの問題ですよ、フライゴン……。”

隣のアブソルがよろよろ起き上がりながら呟いた。

”何してるのよ!寝てなさい、アブソル!”

”そういうわけにはいきません……。敵が近くに迫ってきている可能性も……。”

しかし、アブソルはガクリとシーツに膝をつく。

”ほら!相当負担がかかってたのよ、あの状況!”

”ですが……。”

”いいこと、アブソル。”

ロゼリアが怒りマークを額に三つほど貼り付けてアブソルに迫っている。

”今のあなたに動かれても私達困るの。本当に敵がいても、あなたがそんなんじゃ足手まといなの。”

”ですが……。”

”しつこいわね!寝てないと強制的に眠らせるわよ!”

ロゼリアが薔薇を向けてくる。

「ロゼリア、その方向でねむりごな放たれると、ぼくも巻き添えになるから遠慮してもらいたいんだけど……。」

”あなたも起き上がってラブラブやってんじゃないわよ!一緒に眠らせるわよ!”

「ぼくがこの状態で眠るとハルカがまた泣くと思うんだけど。」

うっとロゼリアがつまる。

「アブソルも。今の君が動くのは得策じゃない。ここにいるんだ。」

”ですが……。”

「さっきからそればかりだね、君は。ハルカの心配も考えてごらん。」

”……。”

アブソルはいつもは見せない気弱な表情でちらりとハルカを見上げる。

うるうる潤んでいる瞳とぶつかり、思案すること数瞬。

”……分かりました。”

ポフリとベッドに横たわる。

”あなたも!起きてないで寝てなさい!”

「ああ、分かったよ。」

ハルカを離し、ベッドに横たわる。

しかし、ハルカは無理やりベッドに潜り込んできた。

「ハルカ、ぼく達といると本当に襲われたときに逃げ遅れる可能性がある。少しでもみんなの近くに……。」

「いや。」

「ハルカ、わがままを言わないで……。」

「シュウ、いつでも一緒に寝てくれるって言った。今寝たいかも。」

「ハルカ……。」

シャツをぎゅっと掴んで離さない。

胸にうずめられた顔からは温かく濡れた感触が。

「ハルカ、いい子だから聞き分けて……。」

その時、クックッとかみ殺したような笑いが隣からした。

見ると、アブソルが愉快そうに笑っている。

”ハルカさんの添い寝付きとは。これならベッドに監禁されるのも悪くないかもしれません。”

「アブソル、そんな場合じゃ……。」

”大丈夫ですよ。もし、敵が攻めてきたら……。”

瞬き一つで鮮烈な赤が翻る。

”命を懸けてお守りいたします。”

本気、だった。

アブソルの目に浮かんでいるのは決意の色。

自分の全てを懸けて守るという決意。

”……なんてね。大丈夫ですよ、私といるなら相手はこの部屋には来ません。”

一瞬でその色は消える。

そこにいたのはいつものアブソルだった。

”戦闘力がダウンしているとはいえ、私は普通のポケモンよりずっと強いですし、何より相手はエスパーポケモンの可能性が高い。私を襲うことはないでしょう。”

伏せていたハルカの顔を無理やり上げさせて、その目元を舐めるような。

「……って、何を堂々とやってるんだ!」

”姉さん、少しお聞きしますが、私達は何時間ほど眠っていましたか?”

”……3時間。”

「3時間!?」

気を失ってからそんなに経っていたのか……。

”ほら、その間、ハルカさんはずっと泣いていたんですよ。少しは優しくして差し上げたらいかがです?”

そう言われてハルカの顔を覗き込むと、目元が真赤になっていた。

「……危険だと感じたら、すぐにこの部屋から逃げるんだよ?」

「うん……。」

我ながら甘いとは思う。

思うのだが、これを見てしまってはもう引きはがすことなどできない。

”良かったですね、ハルカさん。”

「うん、ありがと、アブソル。」

微笑むアブソルからは何の気負いも感じられない。

さっきの眼差しは見間違いだったのだろうか。

”では、私はもう一眠りします。大掃除はお任せしました。”

アブソルがくあーっと欠伸をする。

”……本当に一人で大丈夫なのね?”

”はい。それに、相手にも相当な負担がかかっているでしょうから、すぐには攻めてきませんよ。”

”……何かさっきと言ってることが違うわね。まさか、私達がいなくなった後、一人で抜け出そうとか考えてない?”

”……。”

”何なのよ、その沈黙!”

”その手を思いつかないとは、私もまだまだだなぁと。”

”きいいいいっ!”

ロゼリアの顔の怒りマークが2つほど増えた。

”とにかく!掃除が終わってここにいなかったら許さないわよ!”

とてとて部屋のドアまで駆けていく。

”じゃあ、みんな!超特急で大掃除終わらせるわよ!秘密の発見はベッドを作り直す時でいいわ!”

ロゼリアの号令に皆ダッシュで部屋を出ていった。



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コメント

No title

…いきなりですが、
私、レグルスさんの小説大好きなんです^^

半年前に、サイトのほうの小説を読ませていただいたんですが・・・
もぅ、パソコンの前で涙が出たぐらい感動しましたっ!
小説は、ほぼ読み終えましたょ^^
どれも、素敵な話ばかりで…♪いい意味でやばいですっ!

シュウハル小説を取り扱っているサイトの中で、
1番好きですっ♪

これからも、更新楽しみに待っています><
いろいろ大変でしょうが、頑張って下さいねっ☆

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