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新緑の森のダンジョン 春の嵐 5-1

大変長らくお待たせしましたー。
新緑春シリーズ5話目、スタートします!





ガラスを蹴破られたのだ、と認識した瞬間にはもうアブソルはベッドを飛び出していた。

窓から侵入してきた「敵」はその勢いに煽られたカーテンの影に隠れてよく見えない。

しかし、アブソルは風をまとって突進する。

アブソルは強い。

頭脳・肉体共に強化された5人の中でも随一を誇る。

パワー勝負など純粋な力では劣ることもあったが、それでも彼女に敵う者はいなかった。

それは正体不明の「敵」から、詳細不明の精神攻撃を受けたときも同じ。

目がかすみ、脚がふらつくほどに弱っていたとしても、アブソルは強い。

ツノから放たれる強烈な一撃、相手が何であれ、それで決着がつくはずだった。

だが。

”なっ……!”

生み出した真空の刃が拳によって粉砕されていた。

拳を彩る炎が攻撃によるダメージなど無かったかのように燃え盛っている。

「敵」が一歩こちらに近づいた時、カーテンを煽る風が止んだ。

”っ!?”

その姿にアブソルは一瞬の猶予も無いことを悟る。

”逃げてください!早く!”

後ろのベッドに向かって叫ぶ。

攻撃の余波からハルカを庇うように覆いかぶさっていたシュウはその言葉に頷いた。

深く眠ったままのハルカを抱き上げようとする。

「敵」が跳んだ。

”ぐっ!”

その動線上にアブソルは割り込む。

脳が揺れるほどの手刀をこめかみに受けたものの、「敵」の目的には近づけさせなかった。

前脚で無防備にさらされていた「敵」の手を切り裂く。

「敵」が後ろに下がった。

アブソルはベッドに着地し、構えを取る。

”……一体、あなたは何者です?”

「敵」と睨み合ったまま、アブソルは問いかける。

人間に近いフォルム。

全身は燃えるように赤く、拳には本物の炎が宿っている。

青い眼は力を込めて目の前の相手を見据える。

炎の格闘家の異名を持つ、そのポケモンはバシャーモ。

――油断していた……!

アブソルは内心歯噛みする。

エスパーポケモンこそが敵だと思っていたが、敵が一体だという保証など何も無かった。

よりにもよって、バシャーモは格闘タイプ。

悪タイプのアブソルにとって最悪とも言える相手だった。

”目的は何ですか?”

しかし、そんな心の動きを見せず、アブソルは質問を重ねる。

時間を稼がなくてはならない。

皆が助けに来るまでの時間を。

このバシャーモは恐ろしく強い。

自分だけでは二人を守れるかどうか分からない。

”ピンポイントでこの部屋を攻撃してきたということは、目的は我々のいずれかですか?”

会話で注意を逸らすという作戦は一応の効果は得られたようだった。

アブソルの誰何にバシャーモがチラリとアブソルの真後ろ、ベッドの上の二人に視線を飛ばす。

その瞬間、アブソルは再びベッドを蹴る。

体当たりで窓からバシャーモと一緒に外に転がり出ようと――

”がっ……。”

アブソルは喉に食い込んでくる爪を感じる。

バシャーモはいとも簡単に正面からアブソルの首を掴んでいた。

”……目的は何かと言ったな。”

呼吸が出来ない。

それでも何とか薄目を開けると、鋭い目がこちらを見上げていた。

視線が交錯する。

”取り戻す。それだけだ。”

次の瞬間には、頭から床に叩きつけられた。

会話で注意を逸らされていたのはこちらだった。

数瞬、意識が飛ぶ。

再び、視界が焦点を結んだ時、バシャーモは再び窓の傍にいた。

シュウが抱きしめていたはずのハルカを抱えて。

”ま、待て……。”

ガンガン鳴る頭を振り、声を絞り出す。

”ハルカさんは……渡さない……。”

何とか立ち上がった。

足止めしなければ。

皆が来るまで。

アブソルの耳には皆の羽ばたきが近づいてくるのが聞こえている。

それでも、この緊迫した状況の中では、まるで時が止まったかのように緩やかだった。

”そうか。”

バシャーモがゆっくりとこちらを振り返る。

「アブソル、みずのはどう!」

シュウの声に、アブソルは半ば反射的に水を呼び起こした。

その瞬間、目の前がまばゆい赤に覆い尽くされる。

バシャーモの吐き出した炎が水の壁と激突して凄まじい音と水蒸気を巻き起こした。

間髪入れず飛び込んだ先――水蒸気に一瞬だけ隠されたそこにはもうバシャーモの姿は無かった。




5-2に続く


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はじめまして

 はじめましてsizukaと申しますこのサイトが前から大好きで、小説はすべて読みました!これからも応援してます頑張ってください
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