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新緑の森のダンジョン 春の嵐 9-1

みなさん、こんばんはー。
最近、めっきり秋っぽくなってきましたね。
しかし、このサイトは紅葉の季節でも新緑一色!
そんなわけで、春シリーズ9-1スタートです!


シュウの言葉に、辺りは水を打ったように静まり返った。

アブソルは呆然と、耳に入るままにシュウの言葉を聞く。

”え……。”

理解できない。

バシャーモがエネコを助けに来た――彼はそう言った。

単純な言葉の羅列に過ぎないのに、それがどういう意味を持つのか理解できない。

「アブソル、通訳してくれ。」

彼の言葉にも反応を返せない。

何がどうなって――。

”……そうよ。”

唐突に、高くか細い声がどこからか聞こえた。

その方向を見ると、ハルカの背中にうつ伏せるようにとまっていたアゲハントがいつの間にか顔を上げている。

”アゲハント、大丈夫か!?”

バシャーモが慌てたように彼らの傍らに膝を突く。

自分はそれにも反応できないまま、ただ視線をやるだけだ。

”ええ、大丈夫……。貴女は心配症ね……。”

”お前のような無茶をする奴の言うことなど信用できるか!技を使い続けるのに体力を限界まで使い果たして、その上この子が落ちるのを助けようと動かない体を動かして……!”

”ほんの少し落ちるスピードを緩めるくらいしか出来なかったのだけれど……でも良かった。”

アゲハントが微かに笑みを浮かべ、ハルカの背に頬を寄せる。

シュウの胸に顔をうずめていたハルカも、恐る恐るだがそんな会話を聞いているようだった。

”バシャーモ、この人間さんはこの子を助けてくれた。信用できるかもしれないわ……。”

”信用……だと?”

苦り切った表情でバシャーモが吐き捨てる。

”そんなことができるものか!こちらが油断したところで始末するつもりだろう!”

”ふふっ、やっぱり心配症ね、貴女は……。”

弱々しくアゲハントが笑う。

その微笑みは花が散るように儚くて。

先程まで敵で、これからも敵かもしれないのに、思わず駆け寄りたくなるような姿だった。

”大丈夫、この人間さんとあのアブソルさんとの繋がりは保ってあるから。ちょっと無理をするけど、いざというときは少しくらいなら時間稼ぎもできるわ。”

だから、とアゲハントはちらりと周囲に目をやる。

”近づかないで、貴方達は。”

見ると、4人がじりじりと包囲網を狭めているところだった。

”……うーん、見かけと口調に寄らず、随分ストレートに脅迫してきたねぇ。”

バタフリーが困った素振りも見せず、ぽけぽけした口調で言う。

”まあ、いっか。”

”良くないでしょ、全然。”

イラついたように、ロゼリアが突っ込んだ。

”あの子抱えて逃げられたらどうするのよ。この危ない状況をそんなセリフで済ます気?”

”いいや、ちゃんと考えてるし、向こうもそれは分かってると思うよ。”

一歩分、バタフリーはアゲハントに向かい、ふわりと動く。

”……近づかないで。”

”うん、これ以上はね。こっちが何か仕掛けない限り、君達も動かないだろうから。でもね……。”

バタフリーは睨みを利かせているようだ。

相変わらず、アブソルには無表情にしか見えないのだけれど。

”シュウさんとアブソルに何かしたらただじゃおかないよ。もちろん、ぼく達の可愛いお姫様にも。”

”……。”

距離を置いてバタフリーとアゲハントは睨み合う。

それを先に逸らしたのは、何故か挑発したバタフリーの方だった。

”まあ、バシャーモはともかく、君はその辺分かってくれてるみたいだからねー、ぼくもそこは安心。”

バタフリーは意味ありげに含み笑いをしながら後ろに一歩分再びはばたく。

”君達が仕掛けない限り、ぼくは動かないことを約束するよ。だから、君も妨害超波出すのやめない?”

”……。”

”君でしょ?シュウさんとアブソル入れ替えただけじゃなくて、妨害超波出してるのも。そもそも、精神の入れ替えにしたって、繋がりって言うからには、どんな形であれ繋がってる限り、操作した相手の位置を正確に把握できるような機能まであるみたいだし。”

どれだけ離れていても、こちらの動きは筒抜けということか。

交戦前、フライゴンの探査能力の範囲外でありながらバシャーモに接近を気づかれたのは、バシャーモ自身の力でなくアゲハントによるものだったらしい。

”相手の精神にアクセスしてる限り、その位置関係が分かるっていうだけでも凄いのに、それは入れ替えのオマケでしかないなんてー。エスパーポケモンじゃないのにここまで出来るなんて尊敬しちゃうよー。”

ぼくが透視能力勝負で負けたわけじゃなかったんだねー、とのんきに呟いている。

からかってるんじゃないだろうか、とアブソルは冷や汗をかきながら横目でアゲハントを覗き見する。

アゲハントの表情は全く変わってないようだが、内心は分からない。

”でも、結構負担かかってると思うんだよねー。だから、いざと言うときに負荷がかかりすぎて動けないなんて状況を招くよりも、ぼくが動かないって約束してるのを逆手にそれくらいは止めたら?”

……彼はアゲハントを心配しているのだろうか?

どこか楽しそうな口調からはそんな様子など伺えないのだが。

”アゲハント……。”

バシャーモが立てた膝に置いていた手をアゲハントの額に当てる。

”奴の言うことに頷くのは悔しいが、お前の負担は大きすぎる。妨害超波を止めろ。”

”……分かったわ。”

アゲハントが一度瞳を閉じる。

その瞬間、この辺りの空間を覆っていた何か見えない靄のようなものが消えたような気がした。

”わお、目がよく見えるー。君、ホントに強力なエスパーなんだねぇ。”

バタフリーが感嘆の声を上げた。

”感心、感服。んじゃ、話し合い張り切ってどーぞ!”

”……。”

「……。」

ええと、彼は会談の場を整えようとしてくれていた……のだろうか?

確かに、アゲハントの脅迫とも取れる発言で緊迫していた空気は薄くなったが……。

分かりづらい……。

「あの……。」

今まで黙っていたハルカがシュウの胸から顔を上げた。

泣いていたのだろうか、目が赤くなっているが、怪我などは無いようだ。

ハルカはバシャーモを見上げ、怖々口を開く。

「バシャーモとアゲハント……だよね。二人はわたしのこと知ってるの……?」

”……。”

バシャーモは無反応だった。

じっとハルカを見つめるばかりで、何も答えようとしない。

”そうよ……。”

答えたのはアゲハントだった。

”よく知ってるわ……。貴女のこと、ずっと探してた……。”

切なそうに言葉を紡いでいる。

”アゲハント、お前、この言葉が分かるのか?”

バシャーモが何も答えなかったのは、先程シュウが言った通り、人間の言葉が分からなかったためらしい。

”ええ、人間さんと心が繋がってる限り、人間の言葉は分かるわ……。”

”そうか……、それでこの子は何と?”

”……「わたしのこと知ってるの?」って。”

”それは……。”

悲しげにバシャーモの顔がゆがむ。

”やはり、この子は私達のことを覚えてはいないのだな……。”

先程の強さなど微塵も感じられない弱り切った声だった。

”分かっていたけど、本人の口から聞くと寂しいものね……。”

アゲハントも涙を溜めているようだ。

「あ、あの……。」

小さな声でハルカが呼びかける。

「ごめんなさい、あなた達のことが分からなくて。良かったら、もう一度教えてほしいの。あなた達が一体誰なのか。」

話している内に、しっかりした声と口調になってくる。

「せっかく会えたのに、あなた達が誰なのか分からないなんてわたしも悲しいの。だから教えて。あなた達は一体誰?」

”……。”

ふわりとアゲハントがハルカの背中から飛び立つ。

ふらつきながらもバシャーモの隣に着地した。

そうして、バシャーモと二人で目の前の少女を見つめる。

”私達は――エネコ、生まれたばかりの貴女を知る者よ。”

その言葉に、アブソルは目を見開いた。





10-1に続く

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