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新緑の森のダンジョン 春の嵐 12話 (最終話)

春シリーズ最終話です!
ではどうぞー。





”何で賛成なのよ、何で。”

ロゼリアがぶつぶつ言いながら、カーペットの上にいくつもクッションを敷いている。

”仕方無いッスよ。ハルカ嬢ちゃんからしてみれば、バシャーモとアゲハントも友達なんスから。”

フライゴンがクッションのふかふか具合を確かめながら言った。

”聞く相手を間違ったのがそもそもの原因。姉さん、沸点低すぎ。頭に血が昇るとミスを連発する。大きな弱点。”

”うるさいわね!言われなくても分かってるわよ!”

怒鳴りつけられたアメモースはフライゴンの頭を避難場所に選んだようだった。

器用に止まり、こちらを見る。

”ハルカさんは喜んでいるようですけどね……。”

アブソルは右隣に視線をやる。

椅子に腰かけたハルカは頭をアゲハントに抱きしめられ、バシャーモに手を握られて、まるで姫君のように恭しく扱われていた。








「あのね、こんなこと言っても仕方無いんだけど、もしもわたしが小さな頃に人間に攫われなかったら、きっとバシャーモとアゲハントはわたしの大事な友達になってたと思うの。」

ロゼリアの悲鳴がやんだ後、ハルカは呆然としている反対者に向かって、小さいがはっきりと言った。

「もちろん、ロゼリア達も大切な友達よ。何より、その過去があるからこそ、わたしはシュウに出会えた。」

ぎゅっとシュウの指を握り、

「同時に、その過去はバシャーモ達にとっては凄くつらいものだったと思う。でも、二人はわたしのためにここまで来てくれた。」

もう一方の手を伸ばし、バシャーモの大きな爪をきゅっと握った。

「過去は取り戻せないけど、今ならここにいるバシャーモ達と一緒にいることは出来るもの。だったら、こうして未来へ行きたい。」

その二人の手を握り直して。

「今なら叶えられる。わたしは誰ともさよならしなくていいの。わたしがこの世界にいることを望んでくれるひとがまた増えたの。」

大切な友達がとてもとても嬉しそうに笑うのを見て、ロゼリアは反対できなくなってしまったのだ。









”でも……でも……悔しいぃぃぃぃっ!!”

ロゼリアがクッションをぽすぽす叩きながらジタバタしている。

バシャーモは今でもハルカの手を離そうとしない。

慈愛を込めて、手の甲を撫で続けていた。

アゲハントはアゲハントで、ハルカの頭にすりすり頬ずりを続けている。

”まあ、姉さんの気持ちは分からないでもないですけどね……。”

同時に、バシャーモ達の気持ちも分からなくはない。

きっと、アブソルとバシャーモ達は同じなのだ。

エネコの姿だろうが、人間の格好だろうが、彼女の本質は同じだから。

同じものに惹かれたものとして、引き離されるのがどんなに苦しいか。

大好きな友達が傍で笑っていてくれるのがどんなに嬉しいか。

分かるのだ、誰よりも。

でも、だからと言って。

”別に、家にまで招き入れなくてもいいじゃありませんか、シュウさん……。”

恨みがましげな目つきをしているのは承知の上で、アブソルはハルカ達とは逆、左隣を見上げる。

静かに佇むシュウがハルカをじっと見つめていた。






バシャーモ達との話し合いの決着がついたのはもう夕方に近い時間で。

疲れた体に鞭打ち、シュウの家まで辿り着いた時にはもう真っ暗。

送ってくれたお礼と称して、そのままシュウとハルカが夕食に招いてくれたのはいい。

もちろん大歓迎だ。

ただ、問題はつい先程、家を一部破壊したポケモンも一緒に招かれていたことで。

”何で、バシャーモなんかと同席しなくちゃいけないのよぉぉぉぉっ!”

”ほう、エネコはモモンが好きなのか。”

「うん、甘くておいしいかも!」

”ええ、このモモン、とってもおいしいわ。”

「えへへっ、シュウと一緒に育てたのよ。」

”まあ、こんなにおいしいモモンを育て上げるなんて頑張ったのね。偉いわ、エネコ。”

”うむ、優しいお前が育てたから、このモモンはこんなに優しい味がするのだな。”

”ひとの話を聞きなさい!”








そんなこんなで寝る時間が近づいてきた。

しかし、ハルカのベッドはシュウの暴走により真っ二つ。

シュウの部屋もバシャーモの襲撃により大破。

それで別の場所で寝るということになったのだが。

”オイラ、ハルカ嬢ちゃんを守るために今日はここに泊まるッス!”

”貴様らなどにエネコを任せておけん!”

”ぼくもー。フライゴンに抜け駆けされたらたまったもんじゃないしー。”

”バタフリーはホントにどっちの味方なんスか!”

全員の入る広いリビングが即席のお泊まり会場と化したのだった。







”どうして、先程まで戦っていた相手と一緒におやすみなさいなどという愉快な展開に……。”

「愉快ならいいじゃないか。」

”言葉のあやです!”

分かっていて言っているであろうシュウをきっと睨みつける。

”シュウさん、分かってるんですか?あなたが寝首を掻かれる可能性もあるんですよ?”

「可能性としては皆無じゃないけど……。」

シュウの視線の先には嬉しそうに笑うハルカの姿。

「ぼくに何かあったらハルカが悲しむからしないんじゃないのかな?」

”……シュウさんってそんなに楽天的な性格してましたっけ?”

「君と同じだよ。ハルカの傍にいて、君も随分穏やかになった。」

”……そうでしょうか?”

「ああ。」

シュウの頭の上で、バタフリーもうんうん頷いている。

どうやら、アゲハントの真似をしているようだ。

”まだまだだけどね。もうちょっと丸くならないとモテないよー。”

”何やら、さらっと失礼なこと言いますね、バタフリー。まあ、別に異性にモテなくてもいいんですけど。ハルカさんさえ私のものになれば。”

「こら。」

”冗談です。”

「目が笑ってないように見えるけどね。」

”気のせいです。”

アブソルはこれ以上シュウに心を読まれないよう、ハルカに視線を戻す。

彼女はこれから大切な友になるであろうポケモンに囲まれ、幸せそうに笑っていた。








”寝る用意が出来たわよー。”

ロゼリアの声に、アブソルはハルカからカーペットに視線を移す。

そこには家じゅうから探してきた大小様々なクッションが敷き詰められていた。

”私はここね。さ、そろそろこっちにいらっしゃーい。”

ロゼリアが一番立派なクッションをキープしてハルカを手招きしている。

”ハルカ嬢ちゃん、こっちッスよー。このおっきいクッションならベッドにも負けないふわふわ加減で夢心地間違いないッス。”

クッションを並べていた役得で最も大きなクッションを手に入れているフライゴンと、無言のまま目で訴えるアメモース。

”ふん、下らんな。”

それを見て、バシャーモが鼻で笑う。

”エネコは私と一緒に寝たいに決まっているだろう。”

”うわ、ライバルが増えた!?”

しかし、ハルカは椅子から立ち上がり、腕を広げたシュウの胸に真っ直ぐ飛び込んだ。

ぎゅっと抱きついたのを見て、皆が思い思いのリアクションで悔しがる。

特に、バシャーモの相手を射殺しそうな視線が怖い。

シュウさん、本当に寝首掻かれるんじゃないだろうか。

アブソルはそんな心配を振り払いつつ、カーペットの上に足を踏み出す。

そして、クッションではなく、そのままカーペットに横たわった。

”さ、ハルカさん、どうぞ。この世のどんなクッションよりも深い眠りを提供いたしましょう。”

「うん、ありがとう、アブソル!」

当然のようにアブソルに体を預け寝転ぶハルカ。

思わず頬が緩む。

「……言っておくけど、ハルカはぼくと寝るついでに君を枕にしているんだからね。それを忘れないでくれよ。」

面白くなさそうに呟きながらも、シュウはアブソルにくっつくハルカに毛布をかけてやっている。

綺麗にかけ終わると、シュウもその毛布に包まりアブソルにもたれかかった。

さらに悔しそうなのは他のポケモン達。

”だったら、ぼく、おちびちゃんの隣に寝る!”

”何言ってんスか!オイラに決まってるッス!”

”……アメモース。”

”ふざけるな!貴様らぁっ!”

怒号の響き渡る中、アブソルはハルカに顔を寄せる。

今日は本当に大変な一日だった。

朝の平穏をかき回された所から始まり、一言では言い表せない危険の数々。

だが、眠るこの子のなんと幸せそうなことか。

ならば、今日は幸せな一日だったと言えるだろう。

アブソルもならって目を閉じる。

「そういえばアブソル。」

”何ですか、シュウさん?”

シュウが半分体を起こしてこちらを見ていた。

「訊きたいことがあるんだけど。」

”何なりと。”

「君達の言ってたツアーって何なんだい?」

”……ぐぅ。”

「寝た振りをするな!ちゃんと答えろー!」

さらに加わった怒声を子守唄にしながら、アブソルは幸せな眠りについた。








おしまい




(ハルカさんと遠出できなかったこと、今回は残念でしたが、次こそは成功させてみせましょう。難易度もかなり上がりましたが楽しくなりそうです。)

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