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新緑の森のダンジョン ある夏の一日

新緑シリーズの番外編です。
季節は変わって夏。
ではどうぞー。






ちょうちょポケモン、バタフリー。

お茶目で小粋な虫ポケモン。(本人談)

白い羽をひらひらさせて、今日も笑顔で飛び回る。

そんな彼の今一番の関心事は――







”いやー、ホント凄いよねー、アゲハントって。”

同じちょうちょポケモンのアゲハントだった。

”精神波を感知する能力、範囲広いよねぇ。しかも、それ以外にも能力使えるみたいだし。ああ、もうホント凄いなぁ。”

今日も今日とて親友のアメモースを話し相手にアゲハントについて語っている。

”ぼくの能力は人工的なものだけど、アゲハントのは天然だし。ああいうのを天才って言うんだろうねぇ。”

ここは森に点在する泉の一つ。

その傍に座り、バタフリーとアメモースはいつものように会話を楽しんでいた。

片方は無表情にしか見えないし、もう片方はほとんど話さないが、これでも結構楽しんでいるのである。

”ささっ、飲んで飲んで。”

バタフリーが火にかけたヤカンからお湯を急須に注ぐ。

茶葉を蒸らし、温めておいた湯のみにお茶を注いでアメモースに差し出した。

”夏は熱いものが一番だよー。”

”それ、冬も聞いた。”

”そりゃ、冬は寒いからねー。”

間延びした物言いをしながら、自分の湯のみにもお茶を注ぐ。

ちなみに、バタフリーは一連の動作に指一本動かしていない。

発火能力で燃料も使わずヤカンの水を沸騰させ、サイコキネシスで茶をたてる。

”あー、やっぱり、お茶はいいなぁ。”

ずずず……と一口含んで感想を漏らした。

向かい合うアメモースもコクリと頷く。

美味しいらしいが、超能力の恐るべき無駄遣いである。

”それにしても、アゲハントってホント凄いよねー。”

もう一口飲んで、彼の話題はアゲハントに戻る。

アゲハントとは、この間の春に森にやってきたポケモンである。

炎ポケモンのバシャーモと共に、ある日いきなり彼の仲間を襲撃してきた。

でも、戦う内に、相手の意図や戦う理由が明らかになり。

何でも、アゲハントとバシャーモは、彼らの可愛いお姫様であるハルカの幼馴染のようなものなんだとか。

ハルカが彼女らと一緒にいた期間が短すぎるため、幼馴染と呼んでいいものかどうかは疑問が残るけれど。

でも、彼女らがハルカをそれはそれは大切に想っていることは間違いなくて。

そうして、ハルカを取り戻すため、戦い続けるその姿に共通点を見出した彼の恩人たるシュウが同盟を申し入れ。

現在、この森でハルカを守るための共同戦線がぎこちないながらも張られているのである。

”本人は精神波を感知するって言ってたけど、ぼく、あれってどちらかと言うと波導に似てると思うんだよねぇ。”

ここ最近、アゲハントの能力を見てきたバタフリーはホゥとため息をつく。

”波を感じるっていう点は共通してるし、自分でその波を発生させることもできる。まあ、波導はそれぞれ固有のもので、入れ替えたりなんかは出来ないだろうから、やっぱりアゲハントの能力はエスパー系統のものなんだろうけどさ。”

もう一口お茶を飲んで、もう一度ホゥ。

”でも、そうも言い切れないんだよねー。何度も言うけど、ぼくの知識からして、あんな芸当が出来るエスパーなんて考えられないからさぁ。”

湯のみにおかわりのお茶を注ぐ。

”でも、それが出来るからこそ、天才って言うんだろうなぁ。じゃあ、やっぱり、アゲハントはエスパーなのかなぁ。”

では、最初からエスパーという結論で良いではないかと思うだろうが。

つらつらと毒にも薬にもならないことを延々と語り続けるのがバタフリーの楽しみの一つなのである。

もう一つはもちろんお茶。

”バタフリー、おかわり。”

”はい、どーぞ。”

ここにある急須や湯のみは言葉が通じるようになったシュウに頼んで貰ったものだが、これを貰うまでは木の実の殻などを使ってお茶を飲んでいた。

ちなみに、茶葉は森に自生しているものを収穫して作ったオリジナルブレンド。

いつか究極のお茶を自ら見定めたお気に入りの茶碗で飲むのがバタフリーの夢である。

まあ、それはさておき。

”アゲハントは今日もおちびちゃんのところかなぁ。後で行ってみようっと!”

午後の予定は、おちびちゃんことハルカのところへ遊びに行くことに決定。

飛び立つ前に、バタフリーは自分の湯のみに三杯目のお茶を注いだ。








アメモースと二人、シュウの家に向かってひらひら飛んで行く。

前方に見えてきた二人で住むにはちょっと大きい家が目的地だ。

玄関の扉ではなく、リビングの窓の前にふわりと停止する。

”おちびちゃーん、あーそーぼー。”

家の中を覗き込む。

”あれ?いないなぁ。”

家の中は薄暗く、誰もいないようだった。

”果樹園かな?こっちにいないってことは。”

家の壁に沿って回り込み、裏の果樹園に出る。

果たして、彼らの目的の人物はそこにいた。

大好物のモモンを嬉しそうに一つ一つ収穫するハルカと、そんなハルカをとろけんばかりの顔で見守るシュウ。

そして、ハルカ争奪戦真っ最中のポケモン達。

何やら、ハルカの収穫したモモンを誰が持ってあげるかで揉めているようだった。

”あー、持ってあげたらキスのご褒美だもんなぁ。”

ハルカのキス、それはポケモン達にとって奪ってでも手に入れたいものである。

仲間達はもちろん、最初はキスの存在を知らなかったバシャーモとアゲハントも見事にハマった。

好きな相手に触れられる喜び、至近距離で囁かれる「ありがとう」、自分だけが特別なのだと思わせてくれるその笑顔。

恋愛感情を持ち合わせていようがいまいが欲しいのである、このキスというやつは。

”今割り込んだりしたら殴られるだろうなぁ……。”

隣で、アメモースも残念そうに頷いている。

”仕方無いから、おちびちゃんとシュウさんに挨拶してこようか。”

方向転換して、モモンの木の下の二人の元へ飛んで行く。

”おちびちゃん、シュウさん、こんにちは。”

”遊びに来た。”

「おや、バタフリーにアメモース。君達も来たのかい?」

「こんにちは、バタフリー、アメモース。」

二人が揃ってこちらを振り向く。

”おちびちゃん、相変わらず人気者だねぇ。”

その言葉に、ハルカは照れたように笑う。

「笑い事じゃないよ、ハルカ。その分、ぼくは君と一緒にいられなくなるんだからね。」

そんなハルカとは裏腹に面白くなさそうなシュウ。

「君が友達思いなのは嬉しいけどね。恋人としては複雑なんだよ?」

何かを期待するように顔を覗き込んでくるシュウに、ハルカは照れ笑いに喜びを一片混ぜる。

シュウの胸に飛び込んでいき、その腕を背中に回した。

「シュウったら。わたしがいつでも一緒にいたいって思うのはシュウよ。」

「でも、君はポケモン達と一緒にいる時の方が楽しそうに見えるけどね。」

「もちろん、みんなと一緒にいるのは楽しいわ。でも、こんな風にキスしたくてたまらなくなるのはシュウだけ……。」

目を閉じ、シュウの唇に自らのそれを合わせるハルカ。

そして、ハルカの抱えていたモモンを問答無用でパスされたバタフリー。

”ひえええ……、モモン持ってるのぼくだってみんなに気づかれたらヤバいよー。攻撃されるよー……。”

もちろん、これは不可抗力なのだという言い訳もあるにはあるのだが、そんなたわ言に耳を傾けてくれるような優しい仲間がいるはずもない。

嫉妬という感情は恐ろしいのだ、とても。

”アメモース……。”

”断固として拒否する。”

きっぱり言い切るアメモース。

”えーと……そうだ!”

追い詰められたバタフリーだが、名案を思いつく。

抱えたモモン一つ一つを念力で浮かせ、まだ枝に実っているように見せかけた。

”ふう……これなら何とか誤魔化せるかな。”

”器用なのね。”

”うひゃあっ!?”

急いで振り返ると、アゲハントがバタフリーと同じ高さに浮いていた。

”ア、アレー?何ノコトカナー?”

”サイコキネシスでモモンを浮かせたこと。”

バッチリ目撃されていたらしい。

”……別にぼく、ズルしようとしたわけじゃないよ?あれはおちびちゃんから渡されたんで、咄嗟に受け取っちゃったんだよ?”

アゲハントは責めるでもなくコクンと頷く。

助かった、そこも見ていてくれたらしい。

”そ、そう言えば、何でこっちに?おちびちゃんの取り合いしてたんじゃないの?”

少し無理があるが話題転換を試みる。

相手が事情を分かっていても、あまり触れられたくないことからは離れるのが一番だ。

”してたけど……バシャーモがあまりにヒートアップするものだから。”

見ると、腕から炎を噴き出し、フライゴンと額をぶつけんばかりにして睨み合っている。

”エネコのキスが欲しいのは私も同じだけど……あれだけ真剣なら今回はバシャーモに譲ってもいいかなって思って。”

”ゆ、譲り合いの精神……!”

クスクス笑うアゲハントに、バタフリーは信じられないものを見ているような気分になった。

譲り合いの精神、それはハルカに関わるポケモン達にあるはずのない心がけである。

あるはずの無いものを持っているとするなら、それは即ち。

”女神?”

首を傾げながらコメントするバタフリーに、アゲハントが思わず吹き出す。

”そんなに不思議?”

”うん、ものすごーく不思議。”

そう答えると、アゲハントは静かな笑顔のまま、目を閉じた。

”だって、いつでもキスしてもらえるんですもの。”

”あ……。”

”一目見ることすら叶わなかった今までとは雲泥の差。今がダメでも次にキスしてもらえる。次があるんだもの。それって素晴らしいことだわ。キスを譲ってもいいって思えるくらい。”

ずっとずっとハルカを探していたアゲハントらしい考え方。

見た目と同じく性格も炎のようなバシャーモと違い、アゲハントは穏やかな風のようだった。

”うーん、すごいなぁ……。”

”アゲハント、凄すぎ。”

そんなことは考えもしなかったバタフリーとアメモースはただただ感心するばかりである。

”でも……。”




べちっ!




「痛っ!」

小さな手で空手チョップを繰り出す。

”やっぱり、今したいことはしたいよね?”

ずっとキスを続けていたせいでくたりと力を失ったハルカの肩を抱き、コッソリ連れ去ろうとしたシュウの頭にそれは命中した。

”ええ。ごめんなさいね。”

返事はバタフリーに、謝罪はシュウに向けて、アゲハントは控えめに言う。

そして、嬉しそうにハルカの頭に止まった。

「バタフリー、どうして邪魔するんだ……。」

”どうしてって決まってるじゃん。”

アゲハントの真似をして、バタフリーはシュウの頭に止まる。

”ぼくは欲張りだから、今おちびちゃんと遊びたいんだよー。次も遊ぶけど、やっぱり今も遊びたいのさー。”

見えていないだろうが、ニコリとシュウに笑い掛ける。

アゲハントがクスクス笑ってそれを見ていた。








”やっぱりお茶はいいねぇ。”

”うん。”

今日も緑茶で優雅にアフタヌーンティー。

茶碗を傾け、熱いお茶をすする。

飲み終わったら、お代わりを注ぐ。

いつもと変わりない風景だが、付け加えられたものが一つ。

”アゲハントって面白いよねぇ。”

”うん。”

”おちびちゃん以来だなぁ、あんな新鮮なタイプ。もっと話してみたいなぁ。”

使わないけれど、毎回用意される三つ目の茶碗。

彼の夢、それは、いつか究極のお茶を自ら見定めた茶碗で飲むことである。

気の合う親友と、何だか気になる女の子と一緒に。




おしまい
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コメント

No title

待っていましたよ!!
これからも更新 楽しみにしています^^
無理はしないで下さいね。

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