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新緑の森もカボチャ色 ①

今日はハロウィン!そんなわけで、ハロウィン記念小説ー!
ちょこちょこ連載しますので、ハロウィン過ぎてもよろしくお願いします。
ではどうぞー。


シュウがフライゴンに乗って町から帰ってきたのは、いつもよりずっと早かった。

まだお昼過ぎ。

「シュウ、おかえり!」

これなら沢山シュウとお昼寝できるかも。

そう考えたら嬉しくて、玄関のドアを開けたばかりのシュウに抱きつく。

「ああ、ただいま、ハルカ。」

シュウも笑って頭を撫でてくれた。

いつもの手の感触がとても気持ち良くて、わたしは目を細める。

「うん、よく似合いそうな顔をしているね。」

「え?」

シュウのいきなりの言葉に、わたしは顔を上げた。

「ハルカ、今日は何の日か知ってるかい?」

彼は変わらずニコニコ笑いながら、さらに分からないことを言ってきた。

「え……、シュウが町に行く日?」

「うーん、それも間違いじゃないんだけど。」

シュウの手が頭から離れた。

それを寂しく見送っていると、彼の手は床に置きっぱなしにしていた荷物に伸びる。

「世間一般での意味は知ってる?」

「ううん。」

ふるふると首を振る。

世間一般って他の人間達のことだろうか。

この日って人間にとって何か特別なことでもあるのかな?

「今日はね、ハロウィンなんだよ。」

「あ!それなら知ってる!秋の収穫をお祝いして、悪霊払いをする日でしょ?」

本で読んだことがある。

遠い遠い国の伝統ある儀式のことだ。

「そうだよ。古代ケルト人のお祭りが起源とされている。」

彼が大きな買い物袋をごそごそ探りながら言う。

「でも、最近の人間達は伝統とかそんなことにはあまり頓着しないんだ。どちらかと言うと、楽しいイベントに近いかな。」

「イベント?」

「そう、今はお菓子を貰うイベントになっているよ。」

「お菓子!?」

思わずはしゃいでしまう。

町の人達はそんな楽しいことをしているんだ。

もうお昼寝なんてしてる場合じゃない。

「ねえ、シュウ、わたしも町に行ってお菓子貰いたい!」

買い物袋を探っていた彼に飛びついて頼み込む。

町には行ったことないけれど、彼が一緒に来てくれるならきっと大丈夫だ。

「それは難しいかな。」

でも、シュウはニコニコ笑顔のままですっぱり断ってきた。

「どうしてー!?」

シュウだけ町へ行って楽しいお祭りに参加してるなんてずるい。

「ハルカ、君は勘違いしているね。ハロウィンはお菓子を貰えるイベントと化しているけど、それは子どもだけなんだよ。」

「え……。」

「君は、実年齢はともかくとして、見かけは大人に近いからね。町だときっと子どもにお菓子をあげなくちゃいけない側になるよ。」

「……。」

ガッカリして、思わずシュウの腕に額を落とす。

「そんなに落ち込まないで、ハルカ。それは町での話なんだから。」

「そうなの?」

パッと顔を上げる。

「ぼくに対しては、君もこれを付けてハロウィンを楽しめるよ。」

「これって……。」

彼が袋から何かを取り出した。

「ハロウィンでお菓子を貰う側はね、仮装することになってるんだ。」

それはエネコの尻尾をかたどったおもちゃだった。

「ついでにこれも。」

続いて、袋から出てきたのはエネコ耳のカチューシャ。

「ぼくと君だったら、君の方が年下なんだから、君がお菓子を貰おうとしてもおかしいことじゃないよ。」

「ホント!?」

「ああ。」

彼がエネコ耳と尻尾を差し出してくる。

「付けてごらん、ハルカ。」

「うん!」

バンダナを外してカチューシャを付けてみる。

尻尾はスパッツに挟んで落ちないようにした。

「よく似合うね、ハルカ。」

ぎゅっと抱きしめられる。

「とても可愛いよ。さっきの目を細めたところもエネコのようだった。」

彼の腕の中は温かくて、思わず頬を擦り寄せてしまう。

そういえば、エネコの頃からわたしはこうして彼に抱きしめられるのが好きだった。

「ハルカ、ハロウィンではね、お菓子を貰う前に言う言葉があるんだ。」

シュウの胸に押し付けた耳に直接振動が伝わってくる。

「トリックオアトリートと言う。」

「trick or treat……? 悪戯かお菓子かってこと?」

「そう、お菓子をくれないと悪戯するよという意味。」

「悪戯……。」

お菓子をくれたらお菓子が食べられる。

お菓子をくれなかったら悪戯して楽しめる。

ハロウィンというのはとても楽しそうなイベントだった。

「さあ、言ってごらん、ハルカ。」

「うん、言ってくる!」

「は?」

彼の腕から勢い良く抜け出す。

「わたしの方が年下だったらOKってことだったら、ロゼリア達からもお菓子貰えるってことかも!」

「ちょ、ちょっと待て、ハルカ!そうじゃなくて!」

「だから貰ってくるね!」

「待つんだ、頼むから!」

「いってきまーす!」

何故か慌てた様子のシュウに手を振って、わたしは玄関を飛び出した。










「ハルカ……!」

ぼくは出遅れた自分を激しく責めていた。

エネコの耳と尻尾を付けたハルカはそれはもう可愛かった。

尻尾を振りながら遊びに行った後姿の愛らしさと言ったら無い。

だが、それは全て裏目に出る。

ハルカで遊ぶのが大好きなポケモン達。

いつもハルカにちょっかいを出しに来るというのに、今回はオモチャの方から飛び込んでくるのだ。

それもエネコの尻尾と耳というオプション付きで。

もし見つかったら――

「ぼくのハルカに何されるか分かったものじゃない!」

ぼくはハルカを追って家を飛び出した。







続く(笑)

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